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ベトナム~えー、ある所に~

2006年11月16日

えー、ある所に反物屋の旦那がいまして。昼間は商売も程々に居眠りを繰り返し、夜になると元気になるという、これまた飲んだくれを絵に描いたような男でして。飲み代で蔵でも建つんじゃねぇか、そんな噂もたってしまうような男でございます。 



ちょっと落語が聞きたい、そんな今日この頃。 



昨日、ビアホイで出会った50歳の親父との約束を果たすべく、朝起きて宿のレンタルサイクルを借り、書いてもらった住所を片手に9時頃に宿を出発。 



新市街から旧市街へ掛かる橋を渡り、王宮の側の道を北上する。思いのほか日差しが強く、中国で買った150円のダサダサのサングラスをかける。この調子で行けばあと五分くらいでつくかな、などど思い気楽にペダルを漕ぐ。 



しかし、見当をつけた辺りを何度も何度も周回しても、書かれた「MAI THUC HOA」という通りが出てこない。バイクタクシーの男に住所を書かれたメモを見せると、指差して方向を示してくれる。しかし、その通りは出てこない。 



かれこれ走り続けて2時間半が経ち、あきらめて帰ろうかと思ったが、最期にもう一回道を聞いてみる。洋服屋の女の子は、2~3軒離れた先を指差す。どうやらすぐ側のようだ。 


教えてもらった店に入ると、若い男がにこやかに迎えてくれた。メモを見せると彼は店の奥のほうに行き、誰かを呼んでいる。今さっきまで寝ていたような顔つきで昨日の男が現れた。 



「MAI THUC HOA」と書かれているように見て取れたのだが、どうやら「MAI THUC LOAN」という通りの事だったらしい。男が酔っ払って書いた文字に惑わされてしまった、という訳だ。 



男の店は洋服の布を扱う店、反物屋の旦那って訳だった。彼が自ら刺繍した布地を見せてもらった。僕には到底出来そうに無い緻密な刺繍が施されていた。 



男は二日酔いらしく、小一時間くらい話すと「頭が痛いから少し休むよ。今日もビアホイで5時頃から待っているからな。」と言って、けだるそうに僕を見送った。 



同じ部屋の52歳の日本人の通称ミルさんを連れ、夕方ビアホイに向かうことにした。ミルさんは相当ぶっ飛んでる人だ。市場で買ってきた野菜を自分で漬物にして、それをつまみに日がな酒を飲んでるような人なのだ。 



その日は遊びに行った反物屋の旦那と、寡黙に酒を飲む仕立て屋の旦那の二人しかビアホイに居なかった。僕をバイクで送ってくれたフランス語の得意な彼は居なかった。 



4人で宴会が始まる。するめをあぶった乾き物にトマトチリソースを着けて食べるのが彼らのつまみ。試してみると中々美味しかった。 


のんべぇ4人で、会話も程々に何杯も何杯も乾杯を繰り返す。半分一気だぞ!とか、今度は全部一気だ!などどいって、ゆっくりなんて飲ませてくれない。 



昼間あんなにぐったりしていた反物屋の旦那の眼がいきいきとして輝く。今日はオーバーナイトで飲むぜ!などど言い出す始末。ビアホイの主人も気がつくと輪の中に入って一緒に飲んでいる。 


結局、反物屋の旦那も僕らも酔っ払いお開きになることに。腹が減ったから何かを食べて帰ろうかと思っていると、反物屋の旦那がバイクの後ろに乗れと言っている。僕とミルさんの二人を乗せて向かった先は彼の店。 



彼の店の隣の屋台でであっさりとしたスープの美味い麺をご馳走になってしまった。僕らはまたいつかの再会を約束して宿へ帰った。歩いて30分近く掛かる道のりをふらふらの状態で帰った。



何も食べずに一気を繰り返したせいか、気分が悪くなり宿に戻ってトイレで全部吐き出してしまった。ベトナムで便器を抱えて吐くなんて思いもしなかった。おもわず吐きながら笑ってしまう。 



蚊の多いこの宿は蚊帳が無いと眠れないのだが、酔っ払って蚊帳も広げず大の字になって眠ってしまい、明け方あまりの痒さで眼が覚めた。 



そんなこんなで今日はひどく胃が痛い。洗濯をしたり昼寝したり。一日何もせずに終わろうとしてます。何やってんだかなー、俺。

旧市街側の川沿いにある市場

その市場で見たすごい洋服屋

ご飯におかずを何品か選んで食べられる屋台

飲み仲間になった反物屋の旦那

とにかく浴びるほど飲んだ一夜だった

ベトナムダンディーさん

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