2011年12月25日
こんな映画を思い出した。
「めぐり逢えたら」
クリスマスの晩に、母親を病気で失った少年がラジオ番組に電話をかける。
話の内容は「クリスマスの願い事と夢」。
シアトルに住む少年の夢は「新しいママが欲しい」と訴える。
妻を失いしょげている父親に黙って電話をかけていた少年は、DJに促されるまま父親を電話口に立たせる。
息子とソファーに座り、亡き妻への想いを語る男。
眠れぬシアトルの男と呼ばれた彼は、放送を聞いた女性達から注目を浴びる事に。
そんな女性達の中の一人、婚約者が居るにもかかわらず不思議な思いを抱きはじめた女。
シアトルからは遠い東海岸のボルチモアに居る彼女は彼を探し始めることになる...
トム・ハンクスとメグ・ライアン演じる心温まるラブストーリー。
クリスマス・イブの昨晩、僕は部屋で酒を飲みながら部屋に張ったデカイ世界地図を眺めた。
念願のサンビセンテ岬で旅の終わりを実感しなかった僕は、次はどこへ行こうかなどと考えていた。
旅を始めるきっかけにもなった「深夜特急」の作者、沢木耕太郎さんの年一回のラジオ番組がある事を思い出して、パソコンでどうにか聞けないものかとネットで調べ始めた。
父島には中継局もないし、電波があったとしてもラジオ自体持ってなかったのだ。
ネットで聞けることが判明した僕は、酔いも手伝ってか番組宛にメールを送った。
僕の「深夜特急」が終わったことや現在は父島に居ることなどを。
本人の目にとまるかどうかも分からないけれど、ラジオか聞けることに興奮した僕は駄文を送信した。
深夜0時から始まったその番組をうつらうつらとしながら聴いていると、番組スタッフからメールがあって、沢木氏と電話でお話しませんか?と書いてあった。
目も酔いも覚め、僕は電話番号を送り返した。
メールをくれたスタッフの方から電話があり、2時前後に沢木氏本人と電話をする事になるだろう、そう言われた。
何度も読み返した本の作者と話が出来るなんて!
いてもたってもいられなくなり、どこで電話を受けようかと寮の周りをウロウロしはじめてしまう有様。
結局、壁の薄い寮の部屋や強風の屋外を避けて、会社のトラックの運転席に潜り込む事にした。
暖かい缶コーヒー片手に電話を待つこと数十分。
初めて味わう感じの待ち時間。
合格発表や人を待つような時間とは違う独特の何か。
先ほどのスタッフさんから電話がかかってきて、進行の流れを教えてもらう。
電話をつないだまま、出番を待つ。電話からは番組の様子が聞こえている。
CMあけ、沢木さんのお話が始まってしばらくして声をかけられた。
穏やかな、聞く人に安らぎを与えるような沢木さんの声。
父島のこと、旅のこと、仕事のこと。沢木さんの質問に答えていくよな流れで話は進む。
興味をもって話を聞いてもらっていて、余計なことまで話をしてしまいそうになった。
「(植生回復の)技術者だか経験者である人がこのヤクザな旅を2回、続けたわけ(笑)?」
と沢木さんが言ってくれた時、思わず笑ってしまった。
最後に「またチャンスがあったら話を聞かせてください。」なんて沢木さんから言われて、気分が高揚した。
ラジオを通じて、僕の人生を変えたとも言える本の作者とお話をすることが出来た。
僕は長い旅の果てに沢木耕太郎さんに「めぐり逢う」ことができたのだ。
でもコレはめぐり逢いの序章だと思いたい。
いつの日か、僕の「酔狂な旅」の話を沢木さんに面と向かって伝えることが出来るような人間になりたいものだ。
日本~めぐり逢えたら~
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