せっかく女子3人と行動を共にするも1人酔いどれたキューバ初日~キューバ放浪記・ハバナ~
- ナシオ
- 2017年10月25日
- 読了時間: 6分

いつの頃からか憧れていたキューバ、その首都ハバナの街は長旅で失われつつあった僕の好奇心を取り戻すに十分魅力的な街だった。いや、街に入る前から何かこうワクワクさせる展開があった。
シオマラの家~ハバナの安宿~に着いたその晩、僕は日本人の女の子3人と連れ立ってオールドハバナを散策し夕飯を食べ、最後に酒を飲んで締めくくるというなんとも贅沢な夜を過ごしていた。
1人は数日前にメキシコのカンクンの安宿で出会った女の子で、大きなバックパックを背負った旅慣れた感じのある子だった。
残る2人は女子大生。卒業旅行でキューバにやって来たという訳なのだが、これまたカンクンの安宿で出会った子たちだった。
奇しくも彼女たちとは同じハバナ行きの飛行機だったのだ。
ちょっと小綺麗な身なりの女子大生2人と足袋とニッカポッカに身を包んだ40のおっさんと言う異色の組み合わせの日本人を乗せたカンクン発ハバナ行きの飛行機~実際には他にも日本人はいたのだが~はハバナのホセ・マルティ国際空港に到着すると機内に大きな拍手が鳴り響いた。
一瞬なぜ拍手が?と思ったのだけど、これはキューバ人たちの仕業なのでは?と思った。
かつてのキューバ国営クバーナ航空は機体の整備状態が悪く飛行中に機内が真っ白な煙で充満してしまっただとか、墜落事故が多発していただとか、そんな話を旅仲間から聞かされていた。
そんな事からキューバの人たちは、
「飛行機とは事故に遭うものであるから、何事も無く無事に到着したらそれは大変喜ばしい事なのだ。そしてその喜びは表現するものなのである。」
などと考えているのかも知れない。
勝手な憶測なのだけれど、僕は1つの結論に達した事も嬉しくてキューバ人と共に手を叩いていた。
そんな陽気な飛行機を降り、彼女たちとタクシーをシェアしてハバナの市内へと向かった。僕のハバナ入城は両手に花と言う華々しいものだったのだ。
夕暮れ間近のカピトリオ、旧国会議事堂のあたりでタクシーを降りた僕たちは晩御飯を一緒に食べるという約束をして別れ、それぞれ目的の宿へと向かった。
そして僕はシオマラの家に向かい、カンクンで出会った旅慣れた感じのもう1人の子に再会する。その彼女に女子大生2人の話をすると興味をもったらしく、僕と一緒に彼女たちと晩御飯に行く事になった。
シオマラの家を出て待ち合わせ場所の中華街の入り口の大きな門へと向かった。
陽が落ちたあとのハバナの路地は薄暗く、もし犬の糞が落っこちていたとしても簡単に踏んづけてしまいそうな雰囲気だ。キューバ革命以降まともな車が外国から入ってこなかったのだろうか、通りをおんぼろのアメ車がエンジンからそのまま出てきてしまったような濃く不快な排気ガスをまき散らしている。
壊れかけの建物は日没後には廃墟のような印象を受けるのだが、今までの旅路で横目に見て来たスラム街と呼ばれる場所の危なさのような物は微塵も感じなかった。
中華街と言っても横浜の中華街のように煌びやかな装飾がされたレストランが立ち並び観光客で溢れかえる訳でもなく、宿から歩いて来た通りと何ら変わりのないくたびれた建物が立ち並び排ガスをまき散らす車が走っているだけだった。
無事女子大生2人と合流し、4人で食堂へと向かった。
旅慣れた女の子の案内で向かった店は中華街の門からしばらく行った場所にあり、4~5人も座れば店内は満席になってしまうような小さな店だった。
「オーホーホー!ハポーン!」
体格の良いウェイターが大声で僕たちを歓迎してくれた。
メキシコやグアテマラ、同じラテンアメリカと言われる場所でラテンの「ノリ」に接してきたつもりだったが、それらをはるかに上回る陽気な「ノリ」だった。
「鳥肉か豚肉か?焼いたのか揚げたのか?コーラかビール?何にする?」
と、立て続けに言葉を発してくる。
その勢いに負けそうになりながらも旅慣れた女の子お勧めの鶏肉の定食を頼み、ついでに再会と無事のキューバ到着を祝うためのビールも注文した。
美味しいとは聞いているものの、初めての国の初めての食事なのでどんな料理が出てくるのか興味津々だった。そして思っていたよりも早く注文したものが目の前にやって来た。

豆の入ったご飯の上にドーンと乗っかっている骨付き鶏もも、付け合わせにキャベツの千切りとマッシュポテトのような何か。
鶏肉にかぶりつき、豆の入ったご飯をかっこむ。鳥の油を吸っているのか元々油を入れて炊いたのか、豆の入ったご飯はぱさぱさの味気ないものではなく、どっしりと重みもあり適度に味付けもされていてやたらと美味く感じた。
聞けばこの豆ごはん、「コングリ」と呼ばれるキューバの伝統的な豆ごはんだと言う事だった。
僕はこの「コングリ&お肉定食」をえらく気に入ってハバナ滞在中は何度もこのお店に足を運んだ。お値段35人民ペソ、日本円で200円しないくらいの安さだと言う事も気に入った1つの理由なのだけど。
腹も満たされ次は酒を飲もうと言う事になり、シオマラの家の目の前にカフェバーに行く事にした。格安で生ビールを飲ませてくれるらしいのだ。
1杯6人民ペソ、30円弱の生ビールはジョッキではなくコップで出て来た。なんだかぬるくて気が抜けて酸味が強くお世辞にも美味いと言えるものではなかった。
棚に酒のボトルが綺麗に並べられている訳でもなく、安いラムを頼めばカウンターの下からラベルも何もないただの透明な瓶からラムが注がれる。

コーヒーを頼めば年代物のエスプレッソマシンの淹れたてを飲ませてくれるわけでもなく、作り置きを魔法瓶から小さなカップに注がれる。
けれども酒場の雰囲気は僕を十分に楽しませてくれた。酔っぱらって何を言っているのか理解できないキューバ人のおばさんと乾杯したり、安いラム酒をショットで飲んでいたらご機嫌になってしまった。
おばさんに1杯たかれられても何の躊躇いもなくそれをご馳走してあげる程にご機嫌だった。

振り返ってみれば、せっかく女のコ3人と飲みに行ったのだからちょと洒落た店にも足を運べば良かったのか?とも思うけれど、安酒に身を任せキューバ人たちと共に酔いを楽しむと言う
旅先ならではの酒の楽しみ方を共有できた事の方が良かったと思える。
けれど後悔は翌日にやって来た。
カフェバーを出て宿に戻っても紙パックの安いラムを買って飲み続けていた僕は翌朝「二日酔い君」と再会をしていたのだ。
Comments