ある晩の出来事~グアナファト~
- ナシオ
- 2016年1月29日
- 読了時間: 4分

月曜日からグアナファト大学の授業が始まったようです。 帰省していた学生や新生活を始めたばかりの学生達でいくらか活気づいたグアナファト。
宿にもグアナファト大学に通うメキシコ人学生が一人泊まっている。 彼は新入生。まだ10代の彼は下宿先を探す間ここに泊まるとの事。
そんな若者とつたないスペイン語で話していると、自分も年を取ったもんだと再認識してしまう。 おっさんのスペイン語は髪の毛が日々伸びていくように目立たず少しづつ進歩していると思うのだけど…。
その若者と出会った晩の事。
宿に大勢の日本人がやってきた。 何かの会議のためだという話を宿のスタッフに聞いていたのだが、午後に先生と学生さん達でやってきた。彼らは到着してすぐ出かけたので、挨拶も会話もする事無く夜を迎えた。
寒い中屋上でビールを飲みながらメキシコ人の新入生と話した後、部屋に戻り翌日の学校に備えて眠ろうとした。スペイン語学校が今週で最後なので、深酒せず早く寝てしっかり授業を受けようという心持になっていたのだ。
しかし冷えてしまったせいか、部屋の電気を消して目を閉じてもなかなか寝入る事が出来ない。 目覚めたり眠ったり、夢うつつの状態で時間が過ぎていく。
大勢の日本人が宿に戻ってきた気配を感じると、ますます眠れなくなってしまった。 体調の悪い人がいるようで、なにかとバタバタしていた彼ら。
異国の地で体調が悪くなると、大したことでなくても本人や周りの人間はたいそう心配するものだ。そんな状況なら少しくらいやかましくてもしょうがないと諦めて静かに眠ろうと試みた。
けれども一向に深い眠りに入ることが出来ず、また夢うつつの状態になってしまった。
深夜1時頃に部屋の前で話し声がした。 というよりも、その話し声で目が覚めた。
部屋の前に置いてあるソファで話しているようだ。 静かになるのを待ったけど、我慢できずに一言言おうと思って部屋を出た。
穏便に穏便に。 旅先でちょっとはっちゃけてるだけだしな、と。
男女3人が座るソファーに向かい、
「1時を過ぎているので少し静かにしてもらえませんか?」
と紳士に言ってみた。
そのうちの一人が、
「すいません。」
と言ったので、あぁ良かったなと思ってテラスに行って一服した。部屋に戻る頃には彼らの姿はなく一安心した。これでぐっすり眠れる、と。
どうにもこうにも寒く寝袋にくるまって眠った。
と、これで終われば良かった。
けれど深夜3時。 再び声が聞こえる。
男女二人でソファーにいるようだ。 男が女の子に何かしようとしているのか、女の子は「見ないで~!」だの「ちょっと~!」みたいな事を言っている。
非常に耳障りである。 しばらく我慢してみる。
けれどその声は止む事は無かった。 おっさんの堪忍袋の緒は切れた。
部屋の外に出てソファーに居る男女の姿を確認する。するとさっき注意したメガネ君が居るではないか。
一度言って分からないとは困ったものだ。 キレ気味で文句を言ったが偉そうにソファーに腰かけたままだったので、ソファーに蹴りを入れる。 鬼軍曹を目の前にした新兵のように直立不動の姿勢になったメガネ君。
映画「フルメタルジャケット」のように、
「sir!yes sir!」 とでも言わせれば良かったのか。
そんな姿勢でごめんなさいって言うくらいなら、一回目の注意でやめとけばいいのに。 週末ならまだ良かったものの月曜の夜だぜ。かわいそうに女の子は手で顔を覆いうつむいている。メガネ君だけ引っ張っていけばよかったのかなぁ。
その女の子の姿を見たらなんだかアホらしくなったので、部屋に戻った。 以降物音一つしなくなった。
早朝の移動だったようで翌朝僕が学校へ行く時間にはすでに御一行様の姿は無かった。
テラスで朝のコーヒーを飲みながら、怒ってしまったのは間違いなのか?と自問自答をするはめになってしまった月曜日。
そして今日はもう木曜日だ。学校は明日まで。 宿代を安くする為まとめて前払いしているからあと一週間は滞在するけども、そろそろ次の動きを考えなくちゃならないなぁ。
ペヨーテを食べにちょっとだけ北に行こうとは思ってるんだけどね。 写真は"La paz(平和)"と名の付いた広場の銅像。 俺の心もしばらく平和でありますように。
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