サン・ホセ・デル・パシフィコの雲海~メキシコ~
- ナシオ
- 2016年8月22日
- 読了時間: 4分
1ボックスカーを改造したバスはオアハカからサン・ホセ・デル・パシフィコへ向かっていた。 アメリカとの国境の町、ティファナから南へのバスは砂漠のような荒野を走り抜けたが、オアハカから南へは緑豊かな景色を眺める事が出来る。 北の淋しさすら感じる荒野と違い、木々が多くだだっ広い野原なんかが目に入るとのんびりとした気分になった。 カーブの多い山あいの道に入り山が深くなり右に左にと身体が揺れる。 その揺れに飽き始めた頃、バスはサン・ホセ・デル・パシフィコへ到着した。4時間程の旅路だったか。 山間部の小さな村にはバスターミナルなど無く、レストランの駐車場がターミナル代わりだ。 バスを降りて一先ずタバコを吸い、それからバックパックを担ぎ目的の宿に向かい始めた。 友人お勧めの宿へ向かった。 Cabañas la cumbre、「頂上の宿」と名付けられたその宿への道はずっと登り坂だった。 重いバックパックを担ぎながら、息を切らしながら一歩一歩前へ進む。 息も絶え絶えになりつつ宿に到着すると、100ペソの個室を紹介された。 WiFiは24時間20ペソ、ホットシャワーが浴びたければ一回20ペソと小刻みにオプションで金を取って行くスタイルだった。 けれどもたまにはインターネットのない暮らしも良いと思えたし、陽の高いうちなら水シャワーで平気だと思いどちらのオプションも頼む事はしなかった。 マジックマッシュルームやその他もろもろが手に入ると言うサン・ホセ・デル・パシフィコ。その影響なのかヒッピーめいた客が多かった。 到着時顔を合わした隣室のメキシコ人の男は竹やココナッツの殻などで出来たサックスのような音色を出す楽器を作っていた。 彼とは会話はさほどしなかったが、互いに暇だと僕のギターとセッションなんかしたりした。 到着した日の日没〜20時頃だったか〜眼下に広がる雲海と沈み行く太陽の光の素晴らしい組み合わせに心を持って行かれてしまった。

雲海の上にさらに雲が生まれ背が高くなって行く様や、虎の顔に見える雲が夕陽に照らされ少しオレンジがかりさらに凛々しく見える様を見ていると友人の言っていたこの宿の素晴らしさが分かった気がした。 滞在中毎日この時間を楽しみにしていたが、最初の二日間だけしかハッキリした夕景に出会えなかった。 ほとんどの日は夕方頃に眼下からモヤモヤとした霧が上がってきて、しばらくすると辺り全体が霧に包まれてしまうのだ。 霧に包まれると言うよりは雲の中に入ってしまうと言ったところか。 それでも陽が落ち夜になっても飽きずにテラスからの景色を見ていると、遠くの雲の中でカミナリが発生しているのが見えたりする。それも一か所でなく2.3箇所でだ。

カミナリが発生している場所から目を逸らして晴れた場所の上を眺めると、普段より近くに感じる気がする月や星の灯りがこれまた素晴らしかった。 少し寒いのが玉に瑕だったが、頂上の宿でストイックに引きこもって一週間を過ごした。 一週間目の朝、日々早寝をしていたせいか早くに目が覚めた。コーヒーとタバコとテラスからの景色を楽しみ、パッキングを済ませて宿を出る事にした。 自家製サックスの彼と別れの挨拶を済ませ山を降りた。 サン・ホセ・デル・パシフィコからポチュトラというビーチの手前の街を目指した。来た時と同じように1ボックスカーのバスに乗って。 山を降りポチュトラに着きバスを降りると熱さでぐったりしてしまった。サン・ホセ・デル・パシフィコが秋か冬ならポチュトラは夏だった。 マスンテなどのビーチに向かうか東のサン・クリストバル・デ・ラスカサスを目指すか考えていたが、バスターミナルで各方面行きのバスを調べたりしてその日はポチュトラに滞在する事にした。 寄稿している世界新聞の記事も書かなくてはならないし、何より暑さでぐったりしてしまっていたのだ。 バスターミナルのすぐそばで一泊200ペソの個室のある宿を見つけたので、そこに泊まりちょっとした書物を片付ける事にした。 日本円で1200円に満たない額だが、シャワー・トイレ・テレビ・インターネットが個室に揃っている。バックパッカーからしたら金額的に高い気もするが、たまにの贅沢だ。 一泊のつもりが二泊になってしまったが、美味いモーレソースの入ったタマレスなんかに出会ったりしてなかなかの収穫だった。 何よりの収穫は次の目的地だった。 オアハカからサン・ホセ・デル・パシフィコに向かうバスの中で出会ったオジサンとポチュトラで再会した事で次の目的地が来まったのだ。 夕涼みにと夜にポチュトラの街を散歩していたら、そのオジサンとたまたま再会し少し話をする事になった。 次はどこへ行くんだい?とオジサンに聞かれたがハッキリした目的地が決まっていないと伝えた。するとオジサンは、 「フチタンて場所も良いよ。」 と。 フチタン。 響きが可愛いではないか。 そうだ、フチタンへ行こう! といった感じで次の目的地を決める事が出来たのである。
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