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イグアナスープと亀の卵~フチタン・メキシコ~

  • ナシオ
  • 2016年9月2日
  • 読了時間: 7分

ポチュトラからフチタンを経由して、サン・クリストバル・デ・ラスカサスと言うメキシコ南部チアパス州の街に来て一週間があっという間に過ぎてしまった。

古い街並みと穏やかな雰囲気が心地良い街だ。

ポチュトラで聞いたフチタンの町は好奇心をくすぐられる楽しい町だった。フチタンに向かう前にネットで調べてみると、「母系制社会の町である。」だとか「弟三の性、"ムシェ"なる存在。」が居るだとかと言う様々な面白い情報が出てきたので、「これは何か面白い事にぶつかるんじゃないか?」と期待が高まっていた。実際のところそれらには出会わなかったのだけれど。

11:30ポチュトラ発フチタン行のチケットは155ペソ、バスは町々を経由しまだ陽のあるうちにフチタンに着いた。

とりあえず目的地に着いたのはいいが、宿も決めずに来たのでまずは宿探しをしなくてはならなかった。

バスターミナルの目の前の通りでタイのトゥクトゥクのような三輪タクシーを捕まえ、だいたいの町で中心地の広場であるソカロへ向かってもらった。

「hotel」や「hostel」、「casa de huespedes」などの看板が無いかを気にしながら町に目をやっていると、10分も走らないうちに「この先がソカロだ。」と言われ代金の10ペソを支払い三輪タクシーを降りた。

車道と歩道の段差がやたらと高かったりして少しばかり歩きにくい田舎の町だったけれど、ソカロの周りは多種多様な露店も立ち並んでいて中々活気があって楽しそうな場所に思えた。

フチタン

三軒ほどホテルを当たり、市場のそばにあるホテルに決めた。

着いたその日の夜は屋台でエビのかき揚げと豚足を揚げた物を買って帰り、部屋でビールを飲みながらそれらをつまみにしてくつろいだ。しかし部屋はシーリングファンを全開で回してもひたすら暑く、ビールを買い足しに行ってしまう程だった。

翌日昼前に起き、モーレツに腹が減っていたので前日目にしていた市場の一角にある食堂街に向かった。

メキシコで良く見かける定食のおかず、「ミラネサ」を揚げる姿が見えた店に腰を掛けミラネサを頼んだ。 ミラネサは極薄チキンカツの様なもので、メキシコ風サンドイッチ"トルタ"の具にもなっていたりもする。

ミラネサ、フリホーレス(豆)、お米、たっぷりのトルティーヤと少しばかりのサラダが乗っかった定食、これがまた腹が一杯になる。

「お、この店のミラネサはいくらか肉が厚いぞ!」などとガツガツ食べながら店のメニューに目をやった。

「CALDO DE IGUANA(イグアナのスープ)」

!?

しまった!

初めて入った店で良くメニューを見ずに注文した後に美味しそうなものを見つけてしまった時の気分である。

イグアナが本当に食べられるのかどうか店のおばさんに聞いてみた所、「大体朝の7時から11頃までならあるぞ。」と返って来た。

翌朝の朝食が決まった瞬間である。

予定が出来た嬉しさとイグアナの味への期待感からハイテンションで食堂を後にし、その辺にあった露店を散歩がてら見る事にした。

食堂を出てすぐ、「亀の卵」を売っているのを発見してしまった。

?!

小笠原の父島に住んで居た時に食べたウミガメの卵ではないか! 亀の煮込みや刺身など父島を思い出す味、ウミガメ。父島のバーでは「亀卵ショット」、麺つゆだったかなんだかに亀の卵を落として飲むドリンクがあったはずだ。

晩のビールのつまみが決まった瞬間である。

勢いで塩ゆでされた物を2つと生のままを2つ、合計4つを10ペソ(60円弱)で買ってしまった。

その晩、ビールを買い込み亀の卵を味わう事にした。

亀の卵は茹でても鶏の卵のように殻が固くならず、一部分をつまんで引っ張るとピローンと破れてくる。

そこから固まらない透明な白身と黄身を出してズルッとやる。鶏のゆで卵などとさほど変わらぬ味に自分は思える。おまけに付いてきたリモンにチリと塩がかかったものをかけるとメキシコの味になってしまうのだが。

塩ゆでされたものを先に2つ食べながら、生の卵2つは自分で茹でることにした。 少し前に腹を壊していたので生食はまずいかなと思ったのと、何か実験的な事がしたくてそうする事にした。

砂の付いたままの卵を洗い、湯だけでゆでる事30分。

やはり固まりきらない卵の皮を破り、中身を出す。1つはガーリックソルト、もう一つは醤油をかけて味わった。存在自体が珍しいものであって味自体はそこまで特別な物ではないのだが、亀の卵は父島生活を思い出すに十分な物だった。

翌朝、多少寝坊してしまい10時頃に前日の食堂に向かった。

売り切れてしまってなければ好いのだが、と少し急いで食堂まで歩いた。

客もおらず暇そうにしているおばさんに「イグアナある?」とおばさんに聞くと、「今日はあるぞ。」と。イグアナスープを注文し椅子に腰かけると、おばさんの娘なのか若い子が市場の奥に歩いて行った。

おばさんはおばさんで相変わらず暇そうにしていて何かを作り始める感じがない。

どうやら別の場所で作っている物を買ってくるのだか何だかしているようだ。女の子の帰りが遅いのかおばさんは何度も市場の奥の方へ眼をやっていた。

しばらくして娘がスープを持って帰ってくると、おばさんは温めたトルティーヤと一緒に出してきた。トマトスープ煮込まれたイグアナスープは背びれが残っているのが生々しい。

ひと塊を手でつかみ齧り付く。

身は鶏のような感じなのだが、皮は鍋物にすると美味い魚の皮のようにブルンブルンとしていて実に美味い。見た目やイメージから美味しくないものかと思っていたので、意外性が美味しさのポイントを高めたのかも知れないが。

食後の一服をしようと向かった食堂のすぐそばのソカロをご馳走だと言われてるイグアナが走り回っているのには笑ってしまった。

食べ物の面白さからか僕はフチタンの町が好きになった。

夕暮れ時のみに現れる飲み物屋も面白かった。

市場のそばを歩いている時、壺に棒を突っ込んで火おこしの棒を回すように両手を擦り合わしながらグリグリと棒を回転させている。

壺の中を覗くと、棒の先には歯車の様な物がついていて中身がかき回しやすくなっている。その棒で掻き回された液体はどんどん泡立っていき、ほのかに甘い香りを漂わしていた。

これは何か?とおばさんに聞くと「ブプ」と言う飲み物だと言う。

アトーレと言うトウモロコシの粉から出来た飲み物に、黒糖を泡立てた甘いホイップクリームの様な物がかかっている飲み物だった。一杯10ペソのそれを注文して、路上に適当に置かれた椅子に座った。

赤土色の焼き物の器にこんもりと黒糖ホイップを乗せ「ブプ」はやって来た。

ほんの少しとろみのあるアトーレと黒糖の組み合わせは最高に美味かった。と言うのもアトーレがお餅、黒糖ホイップが黒蜜を思い出させ、きな粉のかかっていない信玄餅を飲んでいるように思えたのだ。暖かさと甘さがほっとさせる味わいだ。

なんで昼間に店を出してないのか聞いてみると、「温かい飲み物は昼間に売れないからね。」と、実に単純な答えが返って来た。フチタンは暑く夜は表に出て涼む方が部屋に居るより心地よい気候だったから、その答えには納得がいった。

結局フチタンには4泊もしてしまった。小さな町なのに不思議と面白い町だった。

フチタン5日目の夜、夜行バスに乗りメキシコ南部チアパス州のサン・クリストバル・デ・ラス・カサスとういう長ったらしい名前の街に向かった。

そして、居心地の良い日本人宿「CASA KASA」に来て九日目。ロスやメキシコシティでお世話になった先輩としばらくぶりの再会を果たす事も出来たし、街の事もだいぶ教えてもらってしまった。

ずいぶんのんびり過ごしてしまっている気もするので、そろそろサパティスタの村オベンティックに行こうか。

 
 
 

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