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グアテマラ、サン・ペドロ・ラ・ラグーナを目指して。その②~グアテマラ~

  • ナシオ
  • 2016年10月29日
  • 読了時間: 4分

降りる場所を通り過ぎていただなんて…。

途方に暮れて煙草を一服。

バックパックを放り投げたあのチキンバスの乗務員の顔を思い出しさらに腹が立った。

しかし神は我を見捨てなかった。

近くの商店で買い物をしていたシエラ方面に向かう家族旅行の車と交渉し、「148㎞ポイント」まで乗せて行ってもらえることになったのだ。

15ケツァールくれればね!という話だったけれども、渡りに船である。気持ちよくそれを支払った。

「148㎞ポイント」で降ろしてもらい、バスやトゥクトゥクにタクシー、あらゆる交通機関の運転手に声を掛けてサン・ペドロ・ラ・ラグーナ行きかを聞いた。

しかしどれも行かないと言う。辺りが薄暗くなり不安が高まる。

30分ほど待ってると「サン・ペドロ~!サン・ペドロ~!」と乗務員が叫ぶバスがやって来た。

今度はバックパックは後部ドアから座席の下へ入れてもらい、荷物を屋根からぶん投げられる心配はなくなった。

けれど、

「バックパックが重いから5ケツァール余計に払え。」

と、集金係が言うではないか。運賃含め15ケツァール。この国の物価やシステムが飲み込めず苛立ちしか出てこない。気分の悪いままチキンバスに乗り込むと客はぎゅうぎゅう詰め。

さらには道路がどんどん悪くなってバスの進むスピードがやたらと遅い。バスが激しくバウンドする度に首を痛めてしまうのでは?と思うほどの衝撃を感じる。

けれど、こういう辛さだったり面倒臭さが実は大好きなのであって、旅を好きな人ってのはドMなんじゃないかって良く思う。

はじめは満員だったバスもどんどん人が降りて行き、1時間ほど経って陽が落ちて闇に包まれた頃には4~5人しか客が居なかった。

真っ暗のバスの車内、こそっとスマホを出して位置を確認してみた。

とりあえずは目的地に向かっているのは間違いなかったが、村のあるべき方角に明かりが見えない。

チキンバスが小さい集落をゆっくり走り抜けている間外へ目をやると、その辺の商店はロウソクの明かりを頼りに営業しているようだった。

遠くに見える集落は街灯や建物から漏れる灯りが沢山見えたので、目的地周辺だけの停電なのだろうと思った。

小さな集落を抜けてしばらくするとスマホの地図が目的地、サン・ペドロ・ラ・ラグーナの辺りに到着した事を示した。

スマホをの地図を頼って目指すホテルのそばでチキンバスを降りる事にした。

他の客に見られる心配もなかったからスマホで確認する気になったけれども、そうでなかったら勘を頼るしかない。なんだかんだ言ってインターネットは旅のスタイルまで変えて行くのだな。

小雨が降る中辺りを見回すが、相変わらず辺りは真っ暗。

別のホテルのおじさんに教えてもらって着いた目的のホテルも真っ暗。

宿の主人に聞くと、やはり数時間前から停電していると言う事だった。

世界一美しいと言われるアティトラン湖を楽しむべく、宿の最上階に部屋を取ったのだけど停電の為に周りに何があるのかすら分からない。

「湖もあって停電もあって、ネパールのポカラか!」と思ってしまった。

大昔、2か月も沈没していた湖のほとりの村ポカラでは、歯医者さんで治療中に停電になってしまい、その日の治療が中断した事もある。

半日をかけての大移動のご褒美にビール、そして灯りの為のロウソクを買いに近くの商店に行った。

ロウソクで営業中の薄暗い小さな商店の中で、

「ロウソクはいくら?」

なんてやり取りをしている時、パッと灯りがついた。

電気が回復したのだ。

店のおばさんとその子供も大喜び。

ロウソクはもう要らないよね?と店のおばさんに笑いながら言われ、ビールだけを買って帰った。

宿に戻って湖の方へ眼をやりながらビールを飲むと、なかなか面白い一日だったと思えてきた。

半日かけての大移動の最中に散々な目に遭ってグアテマラの印象が悪くなってしまうところだったけれど、その晩のビールの美味さと翌朝見る事になったアティトラン湖の姿でそれは回避することが出来た。

そして2週間と少しの日々をこんな景色を眺めつつ、初めてのグアテマラと言う国をこの場所で過ごすことになった。

 
 
 

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