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ただひたすらアティトラン湖を眺める日々~サン・ペドロ・ラ・ラグーナ グアテマラ~

  • ナシオ
  • 2016年11月4日
  • 読了時間: 5分

サン・ペドロ・ラ・ラグーナに来た理由の一つは、「のんびり」する事だった。

まぁ大概どこの土地に行ってものんびりはしているのだけれど。

学費が安いと聞いていたのでスペイン語学校に通う事も考えていたのだけど、メキシコのタパチュラで忙しく動いていたせいか、とにかく何もしないでのんびりと時間を過ごしたかったのだ。

「世界一美しい湖」と言われるアティトラン湖を眺めながら、グアテマラ名産のコーヒーでも飲んで日々を過ごせれば良かった。

普段は昼前に起きる事の多い旅の道中だが、アティトラン湖に面した窓から差し込んでくる朝日が心地良くて早起きの生活になった。

毎朝起きるとすぐに、エスプレッソマシンを旅の間ほとんど出番のないキャンプ用のガスコンロの火にかけて、ボコボコっと言う音が聞こえてくるのを待つ。

その間にも陽はどんどん高くなっていき、コーヒーが出来上がりテラスの椅子に腰かけるとサングラスが必要なほど強烈な日差しと向かい合う事になる。

コーヒーと煙草と美しい湖。

嫌煙家からしたら煙草なんて、と思うかもしれないが空気の良い場所で吸う煙草は格別に美味く感じるものなのだ。

湖を眺めながらコーヒーを2~3杯飲んでその日一日何をするかを考える。

苦労して持ち運んでいる割には弾く事のあまりないクラッシックギターを爪弾いてみたり、雨季の予想しにくい天気を占ってみたりしながら。

宿は多くの観光客が集まる湖畔の賑やかなエリアからは少し離れているので、何かが騒がしいと感じた事は無かった。

たまにその賑やかなエリアに向けて散歩をすると、オーガニック食品を扱う店やヨーロピアンが経営しているように思われるパン屋があったりする事に気付く。もちろん日本食レストランだってある。細い路地を抜けていくのも探検しているような気になって楽しい。

そういった店の存在や穏やかな雰囲気と湖のほとりの村と言う事を考えると、10年前に行ったネパールのポカラを思い出さずにはいられなかった。時代や時期が違うので比較対象にならないかも知れないけれど、ポカラの方がヒッピーなテイストは強かったように思える。

結局ご飯の買い出しくらいしか外に出ず、ブログや投稿している媒体への記事を書いたりネットで情報収集をしていると陽が傾き始める。

夕方が特に風が良いのか、日暮れ前に沢山揚がりはじめる凧を見ていても面白かった。近所の子供が凧を揚げるために宿の屋上にやって来たかと思うと、器用に風を掴んであっという間に凧を相当高い所まで揚げるのだ。

陽が暮れてビールが飲みたくなれば宿の入り口にある売店に行けばいいだけと言う事も宿から出なくなる理由の一つだったかもしれない。その売店にはグアテマラの国民的な酒の様な気がしてならないラム酒、「ケツァルテカ」も売っていた。

これがまたコーラで割るとキツさを隠すという、個人的に気に入った酒だった。

宿から出なくたって、アティトラン湖の姿が変わりゆく様を見ていれば一日なんてあっという間に過ぎて行った。

毎日同じ景色のようだけれども、雲の動きや形に吹く風の向きや冷たさは当然だが毎日違う。

それを観察しているだけでも日々新しい気付きがあって面白いものなのだ。

夜は翌日の朝が楽しみで早い時間に寝る事になる。

陽が落ちて月が出て夜の扉が開く。

ほぼ毎日、陽が出たら起きて陽が沈んだら寝る事を考え始めるような日々だった。まぁ日没直後に眠るなんて事は無かったけれど。

初めは気になっていた事、なぜか時たま出なくなるシャワーや遅くて重いインターネット回線の事なんてどうでも良くなっていった。

湖を眺めたくて値段も少し高い最上階に部屋を取ったのだが、隣の部屋には先客が居た。彼も同じ日本人のバックパッカーで、僕とは逆に南のコスタリカからやって来たと言う。

話していくうちに気が合い、たまに一緒に飯を食ったり散歩に出掛けたりする仲になった。

陽が暮れてビールを飲みながら晩飯を食べている時だったか、今度近くの山に登ろう!と言う話になった。

アティトラン湖は8万4千年もの昔に火山の噴火によって出来たらしく、今なおその周辺に3つの火山を抱える。

そんなこんなで山々に囲まれたアティトラン湖なので色々な山へのアクセスが良く、山へ登るトレッキングレベルのツアーから、素人では音を上げてしまいそうな登山があるようだった。

そこで僕たちが選んだのは「Nariz de Indio(インディオの鼻)」という山だった。その名の通り、寝転んだ人の横顔の鼻がちょうど山頂になっているようなシルエットを持つ面白い見た目の山だ。

隣室の彼も昼間に一回登った事があるという安心感と、泊まっている宿でツアーを頼めば安く上がりそうな事からそこへ決めた。

宿の親父に話を聞く、とインディオの鼻で朝陽を眺めるツアーの代金は入山料、ガイド料、登山口までの移動費も込みで100ケツァール、1400円ほどと言う。ここへ来てから大した観光もしていないし、旅行代理店で聞いた話よりも安い値段だったので親父の言い値でツアーを申し込んだ。

宿の親父は金の話をいつも気にしている節があった。けれど、巣鴨辺りのピンサロの看板のように「完全前金制」みたいな形で決まった金額をスパッと払ってしまえば、仕事をきっちりしてくれるのは分かっていた。

宿代の話になった時も、2週間分先にまとめて払うとこちらが言うと最初に聞いていた値段よりだいぶ安いものにしてくれていたし。

久しぶりの遠足前日のような気持ちになっていたけれど、いつものように早めに床に入って早朝4時の出発に備えた。身体が言う事を聞くかは少し心配だったけれど。

 
 
 

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