死者の日の凧揚げ祭りへ!~スンパンゴ・グアテマラ~
- ナシオ
- 2016年11月19日
- 読了時間: 4分

飲んだくれの日々を過ごしていると死者の日はあっという間にやって来た。
11月1日の死者の日、僕は早起きして宿のテラスでコーヒーと共に目覚めの一服をしていた。
僕がテラスに上がる姿を見たのか、女性オーナーの「男」がやって来て酒臭い息を吐きながら何度も何度も
同じ質問を投げかけてくる。
朝から面倒臭いので軽くあしらい、小さなバックパックを背負って宿を後にした。
死者の日のお祭りを見るために早起きしたのであって、酔っぱらった男の相手をするために早起きした訳では無いのだ。
宿の裏手にあるメルカドを通り抜けてバスターミナルへと向かった。
ツーリスト用のバスでは無く、派手にデコレーションされたチキンバスのターミナルだ。グアテマラシティー行き、乗り換え場所のサン・ルーカスを経由するチキンバスに乗り込んだ。
まだ空席には余裕があってどこでも座れるような状態だったので、窓際の席に座ってバスが発車するのを待った。
空席が埋まるまで発車しないものだと思っていたのだが、バスは思いの他早くアンティグアを出発した。サン・ルーカス手前でやって来た集金係に行先を告げ5ケツァールを渡す。宿の掃除のおばちゃんの言う通りの値段だ。
アンティグアから30分ほどだったろうか、バスは乗り換え場所のサン・ルーカスに到着した。
バスを降りて辺りを見回しながらどうするか悩んでいた。
宿の掃除のおばちゃんお勧めのスンパンゴ村に行くか、もう一か所のサカテぺケス村に行こうかを。乗り換えるのはどちらもサン・ルーカスだったので、とりあえずここまで来てみた訳だ。
そばにいた家族連れに話を聞いてみる事にした。どちらがお勧めのお祭りなのか?と。
その家族はお互い一瞬顔を見合わせて考えていたが、少し悩んだ後スンパンゴをお勧めすると皆が一斉に口を開いた。スンパンゴに行く事を決め、その家族にバス乗り場と料金も聞いた。
乗り場は今乗って来たバスを降りた所であり、スンパンゴまでの料金は3ケツァールだと丁寧に教えてくれた。
僕は「1000のありがとうを!」と言ってその家族と別れバスを待った。
さほど待つ事無く次のバスに乗り込む事が出来、残り少ない空席の一つに座る事にした。
スンパンゴに到着すると、まだ朝の8時だと言うのに早くも車の渋滞が起きているのが見えた。早めに出て良かった、そう思った。
バスを降りてすぐの辺りの露店でタマレスとアロス・コン・レチェ(お米とミルクの甘い飲み物)を腹に入れ、お祭り会場へと足を運んだ。
坂道を上って下ってまた上って。途中会場へ運ばれて行く人の背丈ほどの凧を見かけて写真を撮らせてもらう。

顔を出した女の子の姿が可愛らしい。
会場へと続く坂道は食べ物や土産物屋の露店が所狭しと並んでいて、それを冷かす人や会場へと向かう人で溢れていた。

その坂道を上りきり左へ行った所がお祭りの会場だった。
「Festival de Sumpango 2016,barriletes gigantes(スンパンゴの祭り2016 巨大な凧たち)」
観覧席も設けられていて、かなり力の入ったお祭りだった。

会場の奥には既に大きな凧が立ち並んでいた。

なんとカラフルな凧たちなのだろう。

夢中になって一つ一つの凧をカメラに収めていく。

何やら歓声が聞こえたかと思うと、大きな凧が立ち上げられた所だった。

それを見るために1度通り過ぎたその場所へ戻る。
また別の場所で凧が立ち上がるとその場所へ、と会場を右往左往しながら極彩色の凧の姿を楽しんだ。

形も決まっているわけでもなく、そこに描かれている物もそれぞれに違い、「個性」豊かな大凧なのだ。

これはおそらくグアテマラの国鳥「ケツァール」を表した凧なのだけども、手塚治虫の「火の鳥」を思い出さずにはいられない姿だった。

2時間ほど凧鑑賞に時間を費やした頃、スタッフがホイッスルを吹きながら会場の人ごみをかき分け道を作り始めた。

その道を糸を持った人がダダダっと駆け抜けていく。

なんだなんだ、と思っていると人の背丈ほどもある凧が空に舞い上がり始めた。

巨大なものは見るだけだったのだけど、比較的小さな凧は実際に揚げるために作られた物だったのだ。
舞い上がったかと思うと人々の頭の上に落ちてきてしまう凧もあったりして、なかなかスリリングな凧揚げ祭りである。

それとは無関係に小さな凧を揚げる人も居て、その糸と大凧の糸が絡んだりもしていてカオスな状況だ。

僕の大好きなグアダルーペのマリアもこの後空へと舞い上がって行った。

先祖や死者へのメッセージを凧に託してそれを空へと揚げる、そんなグアテマラの死者の日を僕は充分に楽しんだ。何も死者の日の祭りはメキシコだけでは無かったのだ。
この日は渋滞を避けて早めにアンティグアへ戻る事にした。
宿へ入ると、朝に顔を合わした女性オーナーの「男」は共有スペースのソファーで高いびきで寝ていた。
「もういい加減宿を変えよう。」
祭りを楽しんで気持ち良く帰って来たけれど、そう思わざるを得ない光景だった。
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