レイ・マルコス洞窟探検へ!~サン・ファン・チャメルコ グアテマラ~
- ナシオ
- 2016年11月30日
- 読了時間: 7分

僕はコバンのツーリストインフォメーションでもらった、手書きの地図を見ながらバス乗り場まで向かった。
初老の女性がレイ・マルコス洞窟までの行き方を説明してくれた紙切れだ。
インターネットが普及してスマホ一つで旅の情報収集から飛行機のチケットのブッキングまで出来るようになった時代だけれど、このアナログな感じがたまらなかった。
10年前に初めての海外1人旅をした時、すでにインターネットはあった。けれども、WIFI環境がまだ整って居ない所の方が多かった事やスマホが無かった時代だったので、日本語が打てるかどうかも分からないネットカフェに行ってネットをするしか無かった気がする。
バスや飛行機のチケットも現地の代理店を何軒も回って最安値を調べたり、日本人宿で教えてもらった情報を元に宿探しなんかをしていた。
そんな事を思い出しながら、おばさんの手書きの地図を頼りにバス乗り場へと歩いていた。
教えてもらった通りに歩いて行くと、レイ・マルコス洞窟に行くバスが出るサン・ファン・チャメルコ村行きのバス乗り場へ無事に着くことが出来た。乗り場と言っても舗装もされていないただの広場だ。
サン・ファン・チャメルコ村行のバスに乗ると、客もまばらなうちにバスは走り始めた。
グアテマラのローカルなバスは乗り込むときに料金を支払わず、バスが走っている最中に集金係が代金を集めて回る。
外国人だと思われてぼったくられないか心配だった。
けれどツーリストインフォメーション聞いていた代金の3ケツァールを集金係に渡すと、特に何も言われずその金を受け取り他の客の金を回収し始めた。
わざわざ電話してまで聞いてくれたおばさんを思い出しそのありがたみを感じた。
30分ほどでサン・ファン・チャメルコ村に到着し、乗り換えのバスを探した。
朝食も取らずにコバンを出てきたので、パン屋でパンとコーヒーを買って店の軒先で食べさせてもらう事にした。
サン・ファン・チャメルコは小さな田舎の村と言った感じで、こじんまりした感じやどこか薄汚れた感じが僕の好きな雰囲気だった。
軽い朝食を取った後、レイ・マルコス洞窟行きのバス乗り場を探した。
手書きの地図を頼りにそれらしき場所へと歩いたのだが、バス乗り場らしきものが見当たらず何人かの村人に場所を聞いた。
聞いた人によってその場所が違うので、小さな村を無駄にウロウロしてしまい疲れてしまった。
ウロウロしていた姿を見られていたのか、家の玄関で町の往来を眺めていた親父から何をしているのかを問われた。
レイ・マルコス洞窟に行くバスの乗り場を探している、そう答えると親父は目の前のただの空き地の様な場所を指さした。
「そこからバスが出るから待っていな。」
看板も何も無くただの空き地と思っていた場所が乗り場だったのだ。
煙草を一服していると超満員の1ボックスカーがやって来た。どれだけの人が乗っていたのか?と不思議に思うほどインディヘナの女性たちが降りてくる。
乗客がすべて降りた後その車の運転手にレイ・マルコス洞窟行きかを聞くと、「そうだ。乗れ。」と言われホッとした。
これでレイ・マルコスに行く事が出来る。
バスは冠水した未舗装の道路や林道と言った方がしっくりくるような道を30分ほど走り抜けレイ・マルコス洞窟の入り口へ到着した。
バス代の2ケツァールを渡し下車すると、運転手は未舗装の一本道を指さしながら洞窟のある方向を教えてくれた。
人気のない道をしばらくまっすぐ進むと、レイ・マルコス洞窟のゲートにたどり着いた。

8時開園と看板には書いてあるのだが、鉄のゲートは重たそうなチェーンと南京錠で鍵がかけられていて人の気配がない。
腕時計は朝の9時を示している。
ここまでやって来て休園日なのか…と不安になり始めると追い打ちをかけるように小雨が降りだした。
「Hola!オラ!」と大声で叫んでも誰も出てこない。
ゲート前にあったチケット売り場の様な小屋の軒先で雨宿りをする事にした。
しばらく待っていると、僕が歩いてきた道をこちらに向かって歩く女性の姿が見えた。その女性に聞けば何かしらの事は分かるはずだと思い、僕のそばまでやって来た彼女に質問をした。
「今日ここは休み?」と聞くと、「いいえ、開いてるわよ。」と言い、その女性は鍵を取り出しゲートを開けた。
のんびりしたラテンの時間感覚なのか、スタッフの彼女は開園時間の1時間後にやって来たと言うわけだ。
園内に入り彼女に入場料や洞窟探検の費用などを聞いた。
広い園内にはレストランや休憩所、小川や小さな滝などがあって洞窟探検以外の目的で遊びに来る人も多いそうだ。

入園料として10ケツァール、洞窟探検の代金として30ケツァール、合わせて40ケツァールを支払って洞窟ガイドがやってくるのを待った。
他に客も居なかったのである程度の人数が集まるまで待たされるかと思いきや、長靴とヘッドライトの付いたヘルメットを渡されそれらを身に着けるように言われた。

ヘルメットを被ると現場仕事あがりのせいか、なぜだかテンションが上がる。「今日も一日ご安全に!」と、現場の掛け声を一人心のなかで呟き若いガイドの後ろに着いて歩き洞窟へ向かった。
洞窟の入り口までは10分弱で到着した。
人の背丈よりも低い入り口には鉄格子の扉がついていた。

ガイドを先頭に洞窟に入っていく。
入り口付近は立って歩くほどの高さもなく中腰で前へ前へと進んでいく。

這いつくばるような形で狭い場所を通り抜ける時、バックパックを置いて行けと言われた理由が分かった気がした。
少し広い空間へたどり着いたかと思うと、履いている長靴の高さを越えるほどの川が流れていた。足を濡らしながらその川を越えさらに奥へと進む。川幅はどんどんと広がり水の勢いも激しくなってきた。

なんだか探検家にでもなった気分だった。
ヘルメットにヘッドライトを装着し、暗闇の中を激しく流れる川を越えて。

川をなるべく避けて貼られたガイドロープを頼りに歩みを進め、少し丘になった様な場所に登った。

人が立っても平気なほど広い空間のその先は崩落の危険があるらしく、探検が出来るのはここまでと言う事だった。

ここでヘッドライトを消すように言われ、祈りを捧げるように言われた。
何を祈って良い物か分からず、旅路の安全を願っておいた。
祈りを終えてライトを点けると、ガイドはそろそろ戻ろうと言った。
三脚まで抱えてやって来たので、写真を撮る時間が欲しい事を伝えてみるとガイドは快諾してくれた。
左がサッカーワールドカップのトロフィー、右がピサの斜塔と名付けられた鍾乳石。

激しく洞窟内を流れる川。

僕は時間を忘れて写真を撮る事に夢中になっていたようで、そろそろ戻ろうとガイドに催促されてしまった。
催促はされてしまったが、不満を感じる事も無くガイドに従って戻る事にした。それほどまでに自分の好奇心や冒険心を満たされていた。
「これは面白い。」
久しぶりに新しい何かに心を揺さぶられた気がした。

再度身を屈めながらノロノロと歩き、怪我する事もなく洞窟の入り口まで戻ることが出来た。
変な体勢で歩いたせいか、興奮が収まったのかかなりの疲労感を覚えたので園内のレストランでコーヒーを一杯飲んで帰る事にした。

園内を流れる池や清流に目をやりながら貸し切りで洞窟探検が出来た事を振り返ると、僕は当初行く事を考えていた有名な観光地セムクチャンペイに行く必要が無くなった気がした。
運が良かっただけかもしれないけれど、多くのバックパッカーやツーリストに囲まれながら絶景を見なくても、こうして一人で贅沢に洞窟探検や素晴らしい景色を堪能できるのだ。
旅路が長くなり一人で静かに過ごす時間欲しさからか、僕はこのレイ・マルコス洞窟が気に入ってしまった。
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