リビングストンからフローレスへ~グアテマラ~
- ナシオ
- 2017年2月6日
- 読了時間: 5分

リビングストンの街からどこへ行こうか?
当初はグアテマラの東にちょこんと存在する国、ベリーズへ海路で行こうかなと考えていた。空路や陸路の国境越えと違って船で国境越えだなんて面白そうだな、と言う理由位しか無かったのだが。
リビングストンから海路でベリーズに入り、ささっと北上して再度メキシコに入りカンクンへ。
そしてそこから念願のキューバへ行こう。
アメリカとの国交正常化によって大変動が予想されるキューバを今のうちに見ておきたいと言うのは旅に出る前からの僕の夢だ。
けれども初めてのラテンアメリカ、メキシコに魅了され時間と金を随分と使っていた僕の懐事情はかなり怪しい状態になっていた。
キューバに行ったら旅の資金が底を尽きてしまうのが明らかだった。
まだまだグアテマラ以南の中米・南米の国々にも足を運びたい気持ちが強かった。
「メキシコからどんどん南へ下って、中米・南米を旅して南米大陸の南の果てまで行く。」
と、日本を出る前に何人かの友人達へ話していた。逃げ道としてお金が続く限り、とは言っておいたが。
日本の日常生活を離れて自由気ままに一人旅をしているのだから、自分の思うようにやりたいように旅をすれば良いのだが、有言実行を是とするなら南米大陸の南の端っこまで行かなくてはならない、そんな気がしてしまうのだ。
安煙草をふかしながら、どうしたものかと思案に暮れた。
そんな時、旅路で出会った友人から連絡があった。
近々グアテマラ北部のティカル遺跡に行くけれど、ナシオは次はどこへ行くの?ってな感じのメールだった。
「ティカルか…。」
そこまで興味も無かったティカル遺跡。
けれど今後の旅や資金に悩んでいた僕は、ティカルへ行く事で今後の旅の流れが良い方向へ変わって行くきっかけになるのでは?と思いはじめた。
コバンの街のツーリストインフォメーションでもらった大判のグアテマラの地図の表紙に描かれたティカル遺跡の夜景が素晴らしいものだった事を思い出した。ジャングルの中にそびえたつピラミッドの姿は写真でみるだけどもなかなか神秘的なものだった。
いったん金の心配や今後の旅路に頭を悩ます事を止めた。
何かに導かれるようにティカル行きを決めた僕は、すぐに友人と落ち合う日を決めた。
合計1週間のリビングストン滞在の後、リオ・ドゥルセへボートで戻りすぐさまフローレス行きの2等バスに乗り込んだ。
フローレスはティカル遺跡観光の足掛かりとなる街だ。
乗り込んだバスは大型の観光バスだったので自分の座席が確保されているものだと思っていたのだけど、自由席のそのバスは満席でしばらくの間立っている羽目になった。
一緒に乗り込んだ白人のツーリストのカップルは座席が無い事に僕と同じように驚き、彼女の方はへなへなと通路に座り込んでしまった。
1時間もするといくらかの客がバスを降りたので、席に座る事が出来た。
リオ・ドゥルセからおよそ4時間でフローレスまであと少しといった辺りにやって来た。
フローレスは湖に浮かぶ小さな島だ。
大型の観光バスは島に入ることが出来ないので、バスを降りて歩くかトゥクトゥクかタクシーなどの他の交通手段に乗り換えなければならなかった。
島の手前でバスに男が2人乗り込んできた。
「島まで無料のシャトルバスが用意されている。ツーリストの方はどうぞ!」
僕は彼らを何一つ疑う事なく大型バスを降りて、シャトルバスへと乗り込んだ。
シャトルバスには白人のバックパッカーが3組ほど乗っていた。運転手ともう一人ガイドのような男が前の座席に座った。
そのガイドのような男は、明日の朝のティカル遺跡の予約は済んだのか?とかホテルは決まっているのか?と汚い英語でまくし立てるような勢いで話してきた。
「いや、そのホテルは糞見てえに汚ねぇから、いい所紹介するぜ!」
僕の他の乗客の問いに対して全て否定的に返してくるその男がだんだんと不愉快になって来た。不愉快どころか、このバスはぼったくりのバスのような気がし始めた。
「島にはATMの一つもないから、このスーパーのATMで金を降ろしてくれ!」
男がそう言うとバスはスーパーの目の前で止まった。
そんな訳は無い。僕が調べておいた情報では島にATMがある事になっている。これは相当怪しい。
男の後ろに従ってスーパーの中へ入って行く白人たちを尻目に、僕は運転手に話しかけた。
「このバス、無料じゃないでしょ?」
ガイド風の男と違って穏やかな印象を受けた運転手はこう返してきた。
「明日のティカル遺跡のツアーの予約をするなら無料だ。そうでなけれな50ケツァールだ。」
そんな話は乗り込んだ時には聞いていない。
ツアーの予約が取れるかシャトルバス代が儲かるかどちらか、って事か。
さらにはシャトルバス代を確実に徴収する為にも客に金を降ろさせるって訳か。
「ここで降りるから荷物を降ろしてくれ。」
僕は屋根の上に乗せたバックパックを降ろすよう運転手に頼んだ。
少し揉める事になるかと思っていたのだけど、運転手はばれちゃしょうがないといった顔をしながらバックパックを降ろしてくれた。
なんだか観光客にすれた土地に来てしまったのか、と多少残念な気分になりながら平穏だったリビングストンが早くも恋しくなってしまった。
結局僕はその辺を走っていたトゥクトゥクを捕まえて予約を入れておいた安宿に向かった。 値段は10ケツァールで済んだ。
その晩無事に友人と落ち合い酒盛りをし始め、ビールだけにとどまらずワインまで手を伸ばしてしまい痛飲したのは、詐欺まがいの事をするガイドたちのせいもあったのかも知れない。
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